Microsoft Researchインターンのご紹介。第57回は、北京のラボに滞在していた、京都大学の大谷直樹さんです。大谷さんは京都大学大学院情報学研究科の修士課程に在籍され、黒橋・河原先生の研究室で自然言語処理や機械学習に関する研究を行っている方です。
・所属、学年、研究室
京都大学大学院情報学系研究科 知能情報学専攻 修士課程2年 黒橋・河原研究室
・修士論文・博士論文のテーマ
音声対話システム上のゲームを使って、言語を理解するために必要な常識的知識を収集する方法を研究しています。
・インターンに来たきっかけ、目的
インターンが実現したきっかけは人です。お世話になった先生の紹介で2015年12月のalumniイベントに参加し、そこで出会った人がきっかけになって応募に踏み切りました。
僕はMicrosoftのチャットボット (日本だとりんな、中国だとXiaoice) に強く興味があり、その研究に触れてみたいと思っていました。Microsoftは最近「Conversation as a Platform」という概念を打ち出すなど、自然言語によるインタラクションに力を入れており、MSRAのチャットボットも重要度を増しているように感じていました。
・MSRと大学の研究室と異なるところ
MSRAは大学と違って
– 開発チームとの連携がある: 開発グループと意見交換したりリソースを共有する機会が何回かありました
– ライセンスの制限が大きい: (日本企業でも同じですが、)ライセンスの問題で研究で使うツールやリソースが制限されてしまいます
– 席の配置が結構ランダム: 隣の人が違う研究グループにいたりして、刺激を受けることができました
・MSRに来てよかったこと、刺激をうけたこと
一番目の収穫は目的としていたチャットボットの研究に携わることができたこと、二番目の収穫は良いメンターと仕事ができたこと、三番目の収穫は同年代の面白い人たちとたくさん出会えたことです。
僕が所属したNatural Language Computing (NLC) の対話グループでは、まさに僕が興味を持っていた (と同時にユーザーでもあった) Xiaoiceなどの開発に取り組んでおり、毎週のグループミーティングから刺激を受けました。また、インターンとしてそのプロジェクトに少しでも貢献できたことをとても光栄に思います。
メンターは若手研究者のWei Wuで、チャットボットの技術に関していくつも研究を発表しています。研究についてのアドバイスだけではなく、食事に何度も誘っていただいて、中国や日本の文化についても話しました。また、NLCグループのMing Zhouにも親切に声をかけていただきました。
他のインターン学生との交流も忘れられません。皆研究に対する情熱が強く、話をしていてとても面白かったです。
・MSRのここはちょっといただけないというところ
– Windows + Windowサーバーでの研究に慣れるのにかなり時間がかかりました。コンパイラと文字コードにはインターン中かなり苦しめられました
– MSRAの研究者による学生向けセミナーが何度かあったのですが、中国語で話されることが多かったです。僕の中国語力は後述のレベルなので、専門用語が出てくると認識不能でした
・北京での生活について
英語が通じないことで定評のある北京ですが、僕は「オレ オマエ メシ クウ。ミンナ シアワセ」程度のレベルの中国語を使うことができるので、生活はほとんど不自由しませんでした。つらかったことは、散髪に行ったときに「何でもいいから中国の女の子にモテる感じにして (中国語)」と注文したところ二時間半かけてK-POPアイドル風にされたことくらいです (すごく高かった)。
・インターンに行こうか迷っている人に対して一言
インターンに来ること自体が目的になっていたり、日本から仕事をたくさん持ち込んだりしてしまうと、幸せなインターンにはならないと思います。自分の中で整理して、人に予め相談して、不安要素がなくなっていれば、インターンに来て後悔はないはずです。
・その他なんでも
修士課程でインターンに来ている人は少数派なので、僕は応募するのをずっと躊躇していました。最初に書いたように、京大の馬場先生や、阪大の荒瀬先生、研究室の森田さん、MSの公野さん、指導教員の黒橋先生、ほかにもいろいろな方に相談できたことが、今回のような素晴らしい経験に繋がりました(非常感謝)。
業績が、修論が、英語が、など行けない理由はいくらでも出てくると思いますが、誰かに相談してみるとスッキリするかもしれません。僕も相談されたらできる限り答えます。
大谷さん、ありがとうございました。