海外インターンで成功するために知っておくべき5つのこと

少し前の話になりますが、Microsoft Research Asia(MSRA)で自然言語処理の研究をしている荒瀬由紀が、今年の1月末に奈良先端科学技術大学院大学(NAIST)と大阪大学で講演をさせていただきました。NAISTでホストをしていただいた小町先生にはこの場を借りて改めてお礼申し上げます。

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大阪大学での講演の様子

荒瀬の講演は2部に分かれており、前半は「Spiking Query Classification using Social media」をテーマに、インターンの吉田さんと一緒に行ったプロジェクトを含めて、最近行っている研究の成果のいくつかをお話ししました。後半は「Toward happy and hopefully successful internship」と題して、特に海外での研究インターンに行く際の留意点を話してくれました。荒瀬自身、大阪大学で博士課程在学中MSRAに10か月ほどインターンに来て、メンターのXing Xieと一緒に研究を行っていました。またMSRAでは現在研究者としてインターンの吉田さんのメンターとなり研究プロジェクトを一緒に行い、インターンとメンターの両方を経験しています。荒瀬の後半の講演は、私自身いろいろなMSRAのインターンの方々を見てきた中で非常に納得できる部分が多く、今後MSRを含め、海外のインターンにチャレンジしたいと思っている方には参考になる部分が多いと思いました。今回は本人の許可を得て、彼女の講演のインターンに関する部分の概要を掲載します。これは荒瀬個人のインターンとメンターの経験に基づき、海外の長期のリサーチインターンシップに関して、やっておくべきこと、やらない方が良いことをまとめたもので、すべてのインターンシップのケースに当てはまるものではないことはお断りしておきます。

 

1. Set Clear Goal

リサーチを目的にした海外で長期(3か月以上)のインターンシップにチャレンジする際に最も大事なことは、大学や研究機関のインターンの求人を探す前に、ゴールをできるだけ明確にもつということです。それは具体的であればあるほど良いです。どのようなトピックで論文を書きたいのか、どの会議やジャーナルで発表したいのか、もしくは製品開発にかかわりたいのか、そのインターンシップを通じて何をしたいのかという明確なイメージを持っておくべきです。そして、もしインタビューへすすむことができれば、そのインタビューアにあなたのゴールをきちんと伝えることが必要です。リサーチインターンの場合、インタビューはテストの場ではありません。(少なくともMSRの場合)メンターと学生の興味のマッチングを図る場です。お互いの興味が合わないのであれば無理に合わせる必要はありません。インターンシップで最も残念なケースが、インターンに行くこと自体が目的化してしまい、インタビューを適当にクリアしてしまった結果、インターンとメンターのゴールが合わず、まったくプロダクティビティが上がらない場合です。(自分にとっても、メンターにとっても)貴重な3か月を無駄にしないためにも、事前にゴールを明確に持っておくことがとても大切です。

 

2. Start Discussion as Early as Possible

明確なゴールをもってインタビューに臨み、幸いメンターともうまくマッチングが取れ、滞在期間を調整し、無事オファーレターをもらうことができました。後はビザ等渡航の手続きを行い、2か月後に行くだけとなりました。このインタビューが終わって、実際にインターンシップに行くまでの期間はすでにインターンになったつもりで有効活用しましょう。日本に滞在していても、メンターはすでにメンターなので、インタビューが終わったら早目にコンタクトをとって、遠慮なくさらなるゴールのすり合わせや事前の勉強やサーベイのためのアドバイスをもらいましょう。インターンの3か月はあっという間です。新しい環境でスムーズに研究を進められるようになるには思った以上に時間がかかります。開発環境を含めて研究環境が変わる可能性が大きい場合は、スタートダッシュをかけるためにも事前の準備が大切です。このようなコミュニケーションを事前に重ねることで、メンターと良い関係を築くことができるはずです。

 

3. DON’T Expect Getting Oracle

無事ラボにオンボードし研究プロジェクトを開始しました。メンターと一緒に研究プロジェクトを進めていくうえで大事なことは、メンターとインターンは、立場は同等のcollaboratorであり、プロジェクトを成功させるために一緒に頑張っているわけです。そして2人が取り組む問題はメンターもよくわからない未知の問題であり、メンターが常に正解を与えてくれるわけではありません。一緒にうんうんうなって考えて、一緒にもがき苦しんで、一緒に失敗をすることもある仲間なのです。ですから積極的に自分の考えをメンターに伝えるべきです。

 

4. Be Responsible for the Project

インターンシップの研究プロジェクトは、インターンが主体的に取り組んでいくものです。そのためにメンターはお互いのゴールを確認するためのインタビューを行い、事前準備を手伝ってきました。これはあなたのプロジェクトなのです。従ってメンターとのミーティングは、単なる報告の場ではなく、お互いアイデアを出し合い、メンターからの意見をホールドバックせずに、ディスカッションにあてられるべきです。ディスカッションといっても、同意できない場合には単にNoといい、また同意できる場合に単にYesと言えばいいわけではありません。同意する場合でも、、自分はどのように考えてYesと思うのか自分の考えをきちんと伝える必要があります。またディスカッションの結果、実験してみようということになり、実験した結果10Mのログファイルを単に送り付けるというのは不親切です。少なくともログファイルを自分なりに解析し、グラフを作り考察をつけて送付しましょう。そうすることでメンターとより深いディスカッションができるはずです。

 

5. Be Active!

メンターとのCollaborativeな関係ができると、研究プロジェクトの共同作業を通じてメンターはあなたのとても大切な友人になるでしょう。最後にそして最も重要なことは、同時期に世界の各地からインターンシップに来ている人たちと友達になることです。日本を離れての長期のインターンの生活は簡単ではありません。メンターとプロジェクトを進めていく中で、実験がうまくいかない、意見が合わないといったことが必ず出てきます。そんな際には、「きみのところはどうなのよ?」と相談できる、同じ境遇にある友人とのコミュニケーションはとても大切です。また他の国のカルチャーや、研究分野のことを知る非常にいい機会にもなります。インターンシップの期間は、せっかく来ているチャンスを最大限活かすスタンスで、メンター以外のリサーチャにも話しかけたり、メンターに話してみたいリサーチャの紹介をお願いしたりしてみましょう。また近隣にある大学を訪問したり、他のインターンの出身のラボに訪問したりしてみるのも、ネットワークを広げる良いチャンスになります。こうしたネットワークは将来に渡って貴重な財産となります。

 

以上のような点に留意して、多くの人が海外の研究インターンシップにチャレンジし、実り多いインターンの経験されることを期待しています。

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