MSR Asia Intern(滞在中)のご紹介(第5回)

Microsoft Researchに滞在中のインターンの方のご紹介、好評につき第5回目です。今回は北京でインターンしている早稲田大学の相川さんです。相川さんはコーディングが得意な修士の2年生です。今までの方とは少し違った観点で、インターンについて感想を述べてくれていますので、参考になる方も多いと思います。

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・所属、学年、研究室

早稲田大学大学院基幹理工学研究科情報理工学専攻、修士2年、山名研究室

 

・修士論文のテーマ

-MSRAに来る前の大学のテーマ

学部のとき自分は検索・推薦まわりの研究をしていたのですが、ある意味数あてゲームをしているような微妙な感覚がぬぐえなかったのでより人間の理解に近い枠組みで推薦を含めた様々なタスクをしたいなぁと漠然と思い、自然言語処理まわりで統計的機械翻訳などの論文をあさっていましたが具体的なテーマは決めていませんでした。

-MSRAでのテーマ

Yahoo知恵袋などのコミュニティーQ&Aと言われるデータを用いた研究をしています。現在は、質問を読んで答えとして求められているものが公式情報や一般論なのか個人的な意見なのかを機械に判断させることができないか試行錯誤しているところです。人間だと、結構簡単に判断できますが、機械にやらせると難しいんですよね。

 

・インターンに来たきっかけ、目的

目的の前に、自分がどういう人間なのかから書いていきたいと思います。まず衝撃告白から。僕は、国際学会はおろか国内の研究会にすら論文を投稿したことがありません。理由は、検索スパムにしかならないような論文を世に出しても仕方がないと思っていたからです。もし自分が今まで誰もできなかったようなことを成し遂げ、皆がそれを知りたくて仕方がないようなものができたときだけ、その方法を書けばそれでいいだろうと思っていました。

一方、僕はプログラムを書くのは好きで、ACM-ICPCというプログラミングコンテストに出たり、コーディングを伴うバイトを継続的にやっていたりしました。こういうエンジニアリング的な領域は結果がでたら割とすぐに評価されるので、大学での研究の方が疎かになることもしばしばでした。それなら、研究やらずにそういう道に進めばいいじゃんと思われるかもしれませんが、僕は、SI業界に良くあるような他人に言われてコードを書くことは大っ嫌いですし、やれば書けることがわかっている自明なコーディングをするのもあまり好きではありませんでした。逆に面白い論文を読んで自分でも試してみるようなプログラミングの方が好きだったんですね。簡単に言えば、論文を書くよりコードを書くのが好きな研究者といったところでしょうか。

そんな自分が、MSRAのようなしっかり研究ができる場所に行こうと考えたのは、「大学院という道を選択した自分が全く研究成果をあげないのはやはり良くない。ただ今のままやっていても自分は変わらないだろうから、環境を変えたい。」と思ったからです。なぜそんなことを思うようになったかは自分でも曖昧なのですが、以下のような理由はあります。

-就職活動という自分が行きたいのが技術職なのか研究職なのか悩む機会があったこと。

-親にお金を出してもらって、素直に感謝するようになったこと。

-最初に挙げた理由も、実力がない自分への言い訳にしか過ぎないことも分かっていたこと。

-実際に自分の尊敬するエンジニアの方々の多くは優れた研究成果も出していること。

こういった成り行きで応募したので、MSRAインターンに来た目的は、論文を継続してTop Conferenceに通すような人は、どのように研究をするのか知り、自分もそれをできるようになることでした。

ちなみに、インターンに来た直接のきっかけは、まず、MSRAの存在は、バイト先でSIGIRあたりの論文を沢山読む機会があった際に、MSRAの論文数が際立っていたことで印象づいていました。しかも、そのいくつかがインターン生がFirst Authorの論文であったことも気づいていたので、学生にとっても良い研究所なのだなとそのとき思っていましたね。そんな中、学内でMSRAインターン紹介セミナーみたいなものがあり、教授が行くことを勧めてくれたことが大きいです。

 

・MSRAと大学の研究室と異なるところ

一言で言えば、MSRAは全てが研究をするのに適した環境であるところですね。論文を書くとき、テーマは何がいいか、関連研究はどれを挙げようか、手法はどうしようか、こういう書き方で査読に通るのか、モチベーションが続かないといった悩みがあると思いますが、そのそれぞれに対して優位な点があると思います。

まず、テーマや書き方に関しては、多くのトップレベル学会に論文を通している周りの人たちの研究を知り、意見を聞き、ディスカッションをしていれば、だんだんrefineされていきます。学会に出す前に事前査読を受けているようなものですしね。もちろん、ここの人だって100発100中なわけじゃないですが、やはり他の場所よりも通過確率が格段に上がる気がします。自分は違いますが、ここにしかないデータを使っている人もいますしね。

関連研究や手法に関してですが、インターンの学生も含め多くの研究者が同じ場所にいるので、こういうことって今できているのかな?似た研究はあるのかな?と思ったときに確実に何らかの情報が得られます。手法に関しては、やはり最終的な手法は自分で考えるもののベースライン的なもので詰まる部分が減るといった感じでしょうか。

最後のモチベーションに関しては、様々な要因でたたき上げられます。まず、メンターの酒井さんに1日1回に近い頻度でディスカッションをしていただけるので、何も進んでないわけにはいかないと言う半強制的な面が一つ。同年代のインターンが、頑張っていて実際成果も出しているので負けるわけにはいかないと言う対抗心的な面が一つ。最後の要因としては、研究以外特にすることがないことがあげられます。アパートに帰っても、携帯は持ってない、テレビも理解できない、インターネットも回線が遅すぎてストレスが溜まるだけ、といった状況なので、結局、研究のアイデアを考えたりしてしまいます。

 

・MSRに来てよかったこと、刺激をうけたこと

他の方はわりとMSRAにいる人たちのすごさを挙げているようですが、僕は逆にここにいる人のすごくなさ(?)に、より刺激を受けました。年の近い若いリサーチャーやインターンは結構ゲーム好きで、ビリヤード台はほぼ確実に埋まっています。ワールドカップも熱狂的に応援している人も少なからずいました。また、カップルやすでに結婚している人も多く、研究以外にも、やることちゃんとやっている感じです。

より年が上のリサーチャーになると、遊んでいるところを見ることはなくなりますが、論文を数多く通しているからといって、しっかり一つ一つ物事を考えているといった感じで想像を絶するような発想力は持っていないことが分かります。つまり、雲の上の存在と言うより、普通の人間なんですよね。だから、自分のほうが優れてると思える部分も普通にあるんですよ。自分の場合だと、周りよりしっかりプログラムを書けたり、周りの知らない学習手法やデータ構造を知っていたりですかね。

ここにいると、研究面でのいろいろなことが別に自分にもできるだろと自然に思えてくる部分があります。ここに来てすぐに聞いた話ですが、北京大学や清華大学の修士学生はAランクの国際学会に論文を一本は通さないと卒業できないそうです。これはもう北京大学や清華大学の学生が皆優秀だととらえるよりもやればできるんだなととらえた方が自然ですよね。

もちろん、他の方が書いているように、全体的に皆高いレベルで頑張っているのは事実でそれに刺激を受けている部分もありますが、継続可能で理解可能なレベルでの頑張りだと思います。

 

・MSRのここはちょっといただけないというところ

研究面での重要な部分では特に感じないですが、事務処理や設備に関することでまだ改善点がある気がしています。もっとたくさんの日本人が来れば、きっと改善していくのではないかと思います。もうひとつはPC環境の問題です。ディスプレイが研究室で使っているものより小さくて、キーボードも微妙です。慣れるまでに少し時間がかかりました。

 

・北京での生活について

生活用品に関しては、日本で買えるものは何でも買えると思って大丈夫です。英語はほとんど通じないので、中国語はできればできるほどいいです。言葉が通じなくて困った状況が発生しても怯えず諦めずの姿勢が大切です。車に轢かれないように気をつけましょう。空が青いと嬉しいです。

 

・インターンに行こうか迷っている人に対して一言

迷っている理由はいろいろあると思います。

すでに体験談は何人もの優秀な博士の先輩が書いてくれていたので、僕はこの文章を「自分なんか応募していいレベルじゃないんじゃないか」と思い迷っている人をターゲットに書いたつもりです。そんな人たちに僕が言えることはこの一言です。

「とりあえず、興味のある人は応募してみればいいのではないでしょうか?」

行ってやれるかどうかは自分ではなくMSRAの面接官(研究者)がしてくれます。自分はラッキーでしたが、もし落ちていても、英文レジュメや電話面接の経験は無駄にはならないと思います。MSRAとしては、できる限り優秀な人を採りたいのかもしれませんが、「本当にできる人はMSRAという良い環境を用意されなくてもできるはずだ。MSRAに行くのは自分ぐらいが一番適しているはずだ!」などと少しずるく考えてみてもいいのではないかと思います。

 

・その他なんでも

ちょっと偉そうに記事を書いてしまいましたが、実は今も不安は結構あります。この間も気づいていなかった先行研究を発見したりして、「このままやってて本当に論文書けるのか?」と不安になりましたし、周りの研究者にどう思われてるのかも、実際のところ分からないですしね。あと、この環境で成果出せなければ完全に自分のせいなので、結果が出ないと本気で凹みます。インターンを終えた頃に、「本気で凹むのもいい経験だったな」とちゃんと笑顔で言いたいですね。

 

相川さん、ありがとうございました。

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