MSR Intern Beijing(滞在中)のご紹介(第30回)

Microsoft Research滞在者のご紹介。記念すべき第30回は、北京のラボに滞在中、東京大学の榊剛史さんです。榊さんは松尾研究室でソーシャルメディアの研究に励む、松坂世代最後のPh. D. candidateです。

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・所属、学年、研究室

東京大学 大学院工学系研究科技術経営戦略学専攻 D3 松尾研究室

 

・博士(修士)論文のテーマ

Webを通じたリアルタイムな社会動向の観測及びその利用

自分が所属しているのは、情報系の学科ではなくMOT(技術経営)を専門とする学科であるため、如何に技術を実社会に生かしていくことが研究の目的となります。ただ、自分も、自分の指導教官も情報系出身であるため、その知識・テクノロジを活用した研究をしています。

自分の博論では、ソーシャルメディア、主にTwitterのデータを解析することで、実社会を観測し、それを国家政策の立案や企業経営の判断に生かしていくことを目指します。もう少し具体的に言うと、例えば

・大規模地震時にTwitterを分析することで、どこに何が足りていないかを把握し、より効率的な災害支援を行う

・Twitterの人々の意見を集約することで世論の動向を分析したり、企業のイメージの分析を行うなどがあげられます。

 

・インターンに来たきっかけ、目的

自分は海外での研究経験がゼロだったので、博士課程のうちに一度国外でインターンをしてみたいと思っていました。そんな折、公野さんとHaixunさんが一度松尾研にいらっしゃったときにお話を伺ってMSRAに興味を持ちました。あと研究室の先輩がMSRAを推薦してくれたことと、グループのシニアマネージャであるHang Liさんの研究分野=情報検索に興味があったことが理由です。先輩のプッシュは結構大きかったと思います。MSRAの研究者はレベルが高く、トップカンファレンスのPCなどをやっている人もいるので、研究経験として顔を広げる意味でもMSRAのインターンはオススメだ、と。

 

・インターンでの研究テーマ、目標としている会議など

自分はInformation Retrievalグループに所属しています。

インターンでは、「Text Streamを対象としたトピックモデリングと可視化」を研究しています。文書集合に含まれる潜在的な話題を抽出する=トピックモデリングという研究は10年以上前から情報検索や自然言語処理の分野で研究されている問題です。ただ、既存の手法では速度等の問題で、TwitterやニュースのようなText Streamをリアルタイムに処理することが難しかったんです。その問題に対して、MSRがすでに開発しているMap&Reduceの考え方を取り入れた高速なトピックモデリング手法を適用することで、Text Streamからリアルタイムに潜在的なトピックを抽出し、可視化する、というのが自分の研究です。僕自身のバックグラウンドが応用研究に近いために、こちらでも基礎技術を活用するための応用研究をやらせてもらっています。インターンの最終日がWeb研究のトップカンファレンスであるWWW Conferenceの締め切りだったのでそちらに投稿したかったのですが、さすがに3ヶ月では間に合いませんでした。現在は、言語処理研究のACLやWebマイニングのWSDMなどの国際会議への提出を考えています。

 

・MSRと大学の研究室と異なるところ

こちらに来た時の最初の印象は「結構、大学の研究室と似ているな」と思いました。基本的に生活スタイルは自由で結果を出せば良いこと、毎週グループミーティングで各自の研究紹介や論文紹介をすること(自分のグループに限ったことかもしれませんが)、あとACM Portalなどの有料論文サイトのライセンスを持っていることなどは大学の研究室の非常に似ています。

ただ研究体制や指導方法については、自分のグループについては大学と異なります。基本的に毎週1回メンターと1対1でミーティングをし、研究の進捗報告及び今後1週間の研究方針を話し合います(前述のグループミーティングはメンバーへの研究紹介のみで、指導は行いません)。それ以外でも、疑問や相談したいことがあれば、メンターの席に行ってディスカッションします。また、3,4週間に一度、メンターとグループマネージャと3人でミーティングをし、インターンでの最終的な成果やそれに向けた現状の方向性の修正などを検討します。

このような点で、指導や情報連携についてはかなり密だし、メンターにも相談しやすい環境だな、と感じます。自分の大学の指導教官もかなり丁寧に指導してくれる方ですが、それでも大学やその他の仕事で忙しく、研究室に不在のことも多いので、メールベースで相談をすることが多いです。それに対して、MSRAのリサーチャーの方は研究のみに集中できる環境にあるため、インターンにとっても相談しやすい環境になっていると思います。

その他に良い意味で異なる点は、滞在期間中での明確な形の結果(主に論文)が求められることです。滞在費や渡航費などを負担していただいている以上、明確な成果を出す責任を感じます。また、研究とは関係ない雑用が発生しないので、研究のみに没頭できるのも素晴らしいです。あとコーヒー飲み放題、XboxとKinect使い放題なところでしょうか。

悪い意味で異なる点は、やはり企業であるためPCを使う上でのセキュリティの制約が厳しいところでしょうか。もう少し自由に色々できれば研究効率が高まるのに、と思う場面は数回ありました。

 

・MSRに来てよかったこと、刺激をうけたこと

他の方々も書かれてますが、中国の学生が非常に優秀なところです。学部生でもそこそこ英語が話せますし、博士の学生ではペラペラな学生も多いです。研究レベルも非常に高く、トップカンファレンスを毎年通している学生もいます。人口が日本の10倍だからといって、10倍優秀な学生がいるわけではないですが、それでも優秀な学生が非常に多いです。あとこれはMSに限らず、中国全体に言えることですが、上昇志向の強い人が多いと思います。9月に内モンゴル自治区に旅行したのですが、その時案内してくれた日本語ガイドさんですら「私は今度起業したい」と言っていて、「なぜあなた達は優秀な情報系学生なのに起業しないのか」とちょっと説教されてしまいました。

あと個人的な話ですが、日本だと研究上の仕事や研究以外の仕事も色々と引き受けてしまうのでなかなか研究が進まなかったのですが、そういった仕事をMSRAに来るにあたって全部片付けてクリアにできたのは非常に良かったです。

 

・MSRのここはちょっといただけないというところ

先程も触れましたが、PCを使う上でのセキュリティ上の制約が多いことでしょうか。まあ、大きな企業のでしょうがないとは思います。それと、チーム内での情報流通は問題ないですが、チーム間での情報流通があまり活発ではありません。似通った研究を別々のチームで進めていても、リソースやコードの共有が行われていないケースもあります。あとは、これもMSRだけでなく中国全体にも言えることですが、建物・設備関係の整備がちょっとお粗末です。エレベータがよく故障したり、あとエアコンが寒かったりですね。

 

・北京での生活について

これも皆さん書かれてますが、予想以上に普通に生活できます。食事も安くておいしいですし(辛い料理が中心ですが)、ホテルの近くにセブンイレブンもありますし、携帯電話の環境も整っています。あと、さすが首都だけあって探せば日本人向けの美容院や病院、ジムなどもあるので、生活する上で困ることはないと思います。余り娯楽は多くはないですが、日本語の通信カラオケや漫画喫茶などもあります。まだ行ってませんが、スーパー銭湯のような施設もあるようです。慣れてしまえば、かなり快適ですね。あ、あとこちらはスラっとしたスタイルのいい女性が多いです。

ただ、空気が汚い・娯楽が少ない・街中が色々な意味で危険(車の運転が荒い、道路が陥没してる)・日本語どころか英語も全く通じないのはかなりマイナスです。強制的に食事関連の中国語を覚えることになります(ある意味プラスの面です)それとこちらの安いお店では、日本のような丁寧なサービスは期待できません。基本的に投げやりな接客が多いです。その代わり、それなりの値段のお店にいけばちゃんとしたサービスが受けられます。支払う金額でサービスの品質が決定されるのは、ある意味日本よりわかりやすい点でもあると思います。

ただし、北京市内は非常に治安がいいですが、旅行等でそれ以外の地域に行く際は気をつけたほうがいいと思います。内モンゴル自治区の旅行では、見事にタクシーにぼったくられました(笑)

 

・インターンに行こうか迷っている人に対して一言

博士の方はもちろんですが、修士の学生も物怖じせずにどんどん来るべきだと思います。中国の学生は学部生でも来てますし、皆モチベーションが高いです。よく「自分は海外インターンに行くにはまだ早い」という旨の発言を修士の学生からよく聞きますが、自分を一足飛びで成長するためにはチャレンジ精神が必要だと思いますし、チャレンジの結果のフィードバックが得られる良い環境が整っている場所はそう多くはありません。そういった意味で、ぜひ来ることをお勧めします。

 

・その他なんでも

前述の内容と重なりますが、今の中国は、高度経済成長期の日本と似ていると思います。人々のモチベーション、自信、街中の雰囲気、それに成長を急ぐあまりの環境汚染、やや杜撰な建築や交通等々、清濁両方の点からそれを感じます。(数年前より少し勢いは衰えているらしいですが)。今の日本における閉塞感とはまた違う雰囲気を味わえるのはひとつ貴重な経験でした。

また、日本と違って、自己主張していかないと損をする社会だとも思います。MSRA内ですら、自分の希望を主張しなければ本来受けられたはずの恩恵を受けられないこともあります。そういった異文化に触れる意味でも良い機会だっと思います。

あと、良い仲間に出会えるのもインターンの一つの魅力だと思います。中国人の友人や韓国人の飲み友達ができました。また、北京滞在中に記念すべき30歳の誕生日を迎えたのですが、日本人インターンの皆さんにカウントダウン付きお祝いしていただきました。あの時は本当にありがとうございました!!

 

榊さん、ありがとうございました。

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