MSR Intern Beijing(滞在中)のご紹介(第26回)

Microsoft Research滞在者のご紹介。第26回は、北京のラボに滞在中、東京大学の池畑諭さんです。池畑さんは学部では心理学を学び、大学院からComputer Visionの研究を開始されました。ご自身の興味が自然に文理融合されているあたりニュータイプのPh.D. Candidateです。今後のご活躍に期待します。

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・所属,学年,研究室

東京大学情報理工学系研究科電子情報学専攻 博士課程1年 相澤山崎研究室

 

・博士論文のテーマ

携帯電話やデジタルカメラといった身近なデバイスで撮影した画像から3次元空間を復元する技術の研究に携わっています.究極的には,3次元映像や音声と組み合わせて,写真に代わるよりリッチな情報として,自身の体験や周囲の環境を記録,再現したり,他者と共有する事ができる技術を創り出したいと考えています.

 

・インターンに来たきっかけ,目的

自分の視野を広げるために海外に身を置いて研究をしたいという願望は常にありましたが,それは非常に漠然としたもので,博士課程に進学してからすぐにその機会を望めるとは考えておりませんでした.ところが,修士二年生の冬に指導教官である相澤清晴先生のご厚意で松下康之さんに私の研究の紹介をする機会をセッティングしていただき,その際にインターンを行いたいという申し出を松下さんが快く了承してくださった事が今回のインターンへと繋がっています.

私のMSRAでのインターンにおけるモチベーションは様々なものがありますが,松下康之さんの下で自分を試すことができるということが一番大きなモチベーションになっています.松下さんのインターンが大きな成果を挙げてきた事は存じていますので,自分も結果を残さなければというプレッシャーを心地良く感じながら,インターン期間を終えたときにまた一緒に仕事をしたいと思っていただけるよう研究に励んでいます.

 

・インターンでの研究テーマ,目標としている会議など

異なる光源によって照らされた物体を撮影した複数枚の画像から物体の微細形状を復元するフォトメトリックステレオ法に関するプロジェクトに携わっています.研究テーマをどのように設定するかは,私が最も学びたいと思っていた事の一つでした.今回の場合は,私があらかじめ松下さんに興味のあるいくつかのテーマを話し,それに対して松下さんがプロジェクト案を提示し,それを元にディスカッションしながら最終的な目標を探っていくという方法でした.設定したテーマは私にとっては新しい挑戦ですが,非常に興味深いもので毎日楽しんで研究することができています.目標としているのはコンピュータビジョンの著名な会議であるCVPRです.これから松下さんと一緒に議論しながら論文を書き上げていくことはこれからの楽しみの一つです.

 

・MSRと大学の研究室と異なるところ

皆さんもおっしゃっていますが,MSRは機能的には大学の研究室と本質は大きく異なっていないと思います.セキュリティに関する厳しい規約を遵守すれば,プロダクトに縛られない自由な研究をさせてもらうことができます.私の場合は,もともと開発をVisual Studioで行っていたので,開発環境の違いにも特に困ることもありませんでした.

大きな違いとして感じてるのは,研究のペースの速さです.大学ではテーマ設定だけでも数ヶ月かける事もあるかと思いますが,ここでは時間の制約の関係上,テーマの設定も最初の数週間で大体は終えてしまい,実際に実験に入るまでには1ヶ月とかかりませんでした.もちろんその多くは松下さんのご指導の賜物ですが,それだけではなく,グループ内での情報やリソースの共有,活発な意見交換が研究のプロセスの高速化に寄与していると感じています.例えば,新しい手法を検討する場合に,その手法のプロフェッショナルが必ずいて,彼らと議論する事によって高速に解に辿りつくことができます.もちろん独力で論文を調査する能力も研究者としては必須だと思いますが,プロフェッショナルに助言を請うというスタイルもとても大切なのだと感じました.

 

・MSRに来てよかったこと,刺激をうけたこと

世界中の学生や研究者と触れ合えた事が非常に大きな刺激になっています.同じ分野のリサーチャーの方と議論をするとその知識の深さに驚嘆し,もっと勉強せねばという気持ちが強くなりますし,自分よりも若い学生が頑張っている姿を見ると自分も負けていられないという気持ちにさせられます.そして何より,同じ日本人インターンの皆さんは自分に無いものを沢山持っていて,いつも多くの刺激をいただいています.

また松下さんと話している時間は常に刺激的です.それは研究の話をするときだけではなく,普段の何気ない雑談や飲み会の席等においても同じです.一つ印象に残っているのは,どうすれば日本人のコンピュータビジョン研究者が世界でのプレゼンスを上げる事ができるのかとお尋ねした際に,松下さんがおっしゃった「日本の研究者はもっとスタンダードを上げなければならない」という言葉です.日本ではトップカンファレンスに一つ通すだけで快挙だとみなされますが,MSRAのリサーチャーは一年にトップカンファレンスの一本や二本を通すのは当たり前だと聞きます.そのような高い意識で研究をしないと結果は得られないということなのだと思います.直接自分自身に向けた言葉ではなかったのですが,まさに自分に当てはまる事だったので痛恨の極みでした.

休日には様々な体験をする事ができるのも大きな楽しみの一つです.これまでに天安門やサマーパレスといった文化財を鑑賞したり,京劇を観たり,内モンゴルに小旅行にいったりと,中国を満喫しています.研究とは直接は関係ないのですが,今までは知らなかった中国の文化に触れる事ができたのはとても良かったと思います.このインターンを経てより中国に興味を持つようになりました.

 

・MSRのここはちょっといただけないというところ

これは別にMSRAに限ったことではないかと思うのですが,少々安全性に不安を感じることがありました.新しいオフィスに移ってから窓が3回落ちたという話を聞いたときには驚愕しましたし,エレベータが故障するという場面にも何度か出くわしました.また,これは必ずしも悪い点というわけではないのですが,予想以上に中国語に依存した環境だったのが意外でした.もちろん,殆どのインターンの方は英語を話せますし,研究上の問題は無いのですが,例えば招待講演が中国語で行われたり,社員食堂で中国語でしか意思の疎通ができなかったり,といった事がありました.ですが,一方でそれが外国人インターンにとって中国語を学ぶモチベーションにもなっているようです.私の場合も,社員の方にノートをいただいたり,社員食堂で食べたいメニューを伝えたりといったことの経験を積み重ねていくうちに,なんとなく中国語でコミュニケーションが取れるようになったことがとても嬉しかったです.

 

・北京での生活について

北京の住みやすさは東京のそれとあまり大きく変わらないと思います.むしろ公共交通料金,食費,生活物資費用は日本と比べて圧倒的に安いです.日本が恋しくなっても日本のチェーン店であるセブンイレブン,吉野家,ほっともっと等がありますし,オフィスから少し離れた場所には日本式のカラオケや漫画喫茶もありますので大丈夫です.ただし,日本の常識とかけ離れたところもあります.一番衝撃的だったのは日本のように歩行者が優先されるという事が一切無いということです.交差点で青信号を渡っている歩行者を車が待つということはあり得ません.歩行者の方も,基本的に赤信号でもガンガン渡っていきます.大きな交差点では始終クラクションが飛び交っています.

 

・インターンに行こうか迷っている人に対して一言

もし今明確な目標が無くても,MSRAに来てモチベーションが上がらない人はいないと思いますし,今最も発展している国の一つである中国に3ヶ月以上住む事ができるという一点だけでも将来の糧になると思います.また,日本を離れることで初めて,日本の快適さ,日本人の美徳,自分の環境がどれだけ恵まれていたのか等が詳らかにわかります.

 

・その他なんでも

インターネットやSNSが普及してパソコンを通して世界をすべて知ることができるような気になっていましたが,やはり自分の目で見たり,体験したことはそれとは全く異なります.世界はやはり広いです.

池畑さん、ありがとうございました。

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