MSR Asia(滞在中)のご紹介(第25回)

Microsoft Research滞在者のご紹介。第25回は、北京のラボに滞在中、東京大学の羽鳥潤さんです。羽鳥さんは2度目の登場で、昨年レドモンドのインターンを経験し、今年は北京のラボに滞在していただいています。北京とレドモンドでの学生やインターンの雰囲気の違いについて詳しく語って頂いています。「自分から積極的にネットワークを広げる事が求められています」というのはどちらのラボにも共通で、そういうことに価値をおかない人には、MSRインターンのメリットはあまり多くないと思います。

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・所属、学年、研究室
東京大学大学院・情報理工学系研究科・コンピュータ科学専攻(旧)辻井研究室 博士3年

・博士論文のテーマ

自然言語処理における、単語分割・品詞解析に関連した問題に取り組んでいます。

これらの問題は、特に分かち書きの為されていない日本語・中国語・タイ語などの言語に於いてあらゆる処理の基盤となるものですが、依然として解決すべき問題が多く残っており、例えば、近年急速に需要が増しているウェブやマイクロブログ等のデータを扱う際に、旧来のモデルが十分にうまく働かず、後続のタスクを処理する上での一つの障壁になっているという現状があります。

 

・MSRに来たきっかけ、目的

Microsoft Research(MSR)の自然言語処理グループには世界的に認知されている研究者が多く、論文を目にする機会も多かったので、以前から興味を持っていました。昨夏、レドモンドのMSRでインターンをさせて頂く機会を得ましたが、その時の経験は非常に充実したもので、特に、研究のレベルは言わずもがな、実用をしっかりと見据えた研究のスタイルや、様々な分野の研究者が自由に議論を交わすオープンな雰囲気が心地よく、チャンスがあればまたMSRで研究をする事が出来ればと考えていました。また、最近は実験の対象として中国語のコーパスを利用する事が多かったため、中国に対する言語・文化的な興味が強くなっていた事も挙げられます。

直接の契機としては、折しも指導教員の辻井潤一先生がMSRAに移られた事が幸いし、先生のご厚意で北京に滞在して研究をさせて頂ける事になりました。

 

・研究テーマ、目標としている会議など

博士論文の研究に関連して、特に、中国語における単語分割・品詞解析の問題に取り組んでいます。滞在中は特に、中国人インターンや研究者と気軽に議論できる「地の利」を生かして、中国語の言語的な性質をうまく捉えつつも、ウェブ等の非標準的なコーパスに対しても頑健なモデルを構築する事を主眼に置いています。現在、秋~冬にかけて投稿シーズンとなるACL系の学会を目標に研究を進めています。

 

・MSRAと大学の研究室と異なるところ

大学の研究室だとどうしても研究室内部でコミュニティが閉じてしまいがちですが、MSRAでは他分野の人たちと食事に行ったり、別グループのミーティングに参加して知識を交換することが盛んで、必要に応じて分野間の繋がりを最大限に活用しようという意気が感じられます。

また、各分野の概要を詳しく紹介してくれる講演が時々あり、このような講演を通じて他分野についての知識を深める事も出来ます。しかも、このような講演は大学よりも遙かに頻繁に開催されています。

 

・MSRAに来てよかったこと、刺激をうけたこと

一番良かったと思うのは、やはり、様々な国・分野の人たちと交流できた事です。普段の食事の時などに、各分野の現状や最新の動向を聞く事が出来ますし、将来のキャリアなどについても皆しっかりとした考えを持っていて、新しい人たちと食事に行くのはいつも新鮮で楽しい経験でした。

また、世界的な研究コミュニティの中で一際巨大な存在感を放っている「中国人」については、北京に来る前からとても興味を持っていたのですが、MSRAで数百人の中国人研究者・インターンに囲まれて研究をしていると、彼らの持っている勤勉さ、毎日規則正しい生活をし、よく寝て、ひたすら頑張る事を物の数とも思わない姿勢には、日々圧倒されつつも刺激を受けています。

 

・MSRAのここはちょっといただけないというところ

これはレドモンドでも感じた事なのですが、オフィス内の空調が寒いのには時々困りました。

また、多くの方が書かれているように、魅力的な講演の多くが中国語で行われているのは非常に残念な点です。今後、もう少し国際化が進んでくると、外国人としてもより魅力的な場になるのではないかと思います。

 

・北京での生活について

全体としては、中国の首都だけあって、予想していたよりも遙かに物資・施設の近代化が進んでおり、生活面でそこまで困る事はありませんでした。街に立ち並ぶ近代的なショッピングセンターでは、日本で売っているような生活用品はほとんど手に入りますし、外国人を受け入れている総合病院では日本語・英語でのサービスも受けられます。

しかし、食事面では、安価な値段で様々な中華料理が食べられる一方で、いわゆる日本的でさっぱりした料理は少なく、あったとしても非常に高価な物になってしまいます。MSRAが斡旋してくれる住居には調理用の器具がない為、自炊を行う事は少し難しく、濃厚で脂っこい料理に辟易してしまう事が時々ありました。

また、中国の主要な都市では普通なのかも知れませんが、季節と時期によって、非常に空気が汚い日が続く日があり、日によっては百メートル先が霞んでいるのを見るという初めての体験をしました。そのような日には、中国人であっても屋外を長時間歩かないなどの対策を取るようで、綺麗な空気の中で当たり前のように暮らせる日本とは全く価値観が異なります。しかし、北京に2ヶ月強滞在してみると、そのような日常にもほとんど違和感が無くなってしまうもので、慣れというものは恐ろしい、いや、極めて有用な人間の性質である事を実感します。

 

・MSRとMSRAの違い

メンターとの関係やミーティングのスタイルなどについては加藤さんが書いて下さっているので、私からは主に周囲の学生・インターンの雰囲気について書かせて頂きます。

MSRAに来るまでは、正直レドモンドと雰囲気がこんなにも異なっているとは思いませんでした。PhDコースの学生が大多数を占め、インターン期間も通常は夏の12ヶ月に制限されているレドモンドと異なり、MSRAのインターンは学部生・修士学生の割合が高く、期間も比較的長期間になる場合が多いです。特に、中国の学部生・院生の中には、大学との協定によってMSRAで研究を行いながら学位を取得するケースが少なくないようで、数年に渡って滞在するケースも稀ではありません。そのためか、インターン自身によるクラブ活動やイベントの企画があり、研究所全体が様々な面で一つの大学のような側面も持っています。また、噂には聞いていましたが、中国の学部生の志は非常に高く、インターンの中のかなりの割合が卒業後の留学を考えています(実際、東京大学の入試プロセスについて、何人かの熱心なインターンから質問を受けました)。また、自分より遙かに若い学部後半の学生が、トップレベルの国際会議を狙って研究をしているのは衝撃的ですらあります。

インターン同士の繋がりという観点からは、レドモンドではアメリカ国内の大学からのインターンが多いため、将来を見越したアメリカ的なネットワーキング、つまり、様々なインターンや社員と毎日のようにランチやディナーに行って、どんどん知り合いのを広げていくというプロセスが、日常的かつ全体的に行われています。
一方で、MSRAでは比較的若い学生が多い事もあり、普段は同じグループや出身校の人たちと食事を取る場合が多いようです。しかし、様々なイベントや知り合いの伝手などを通じて新たな知り合いを見つけて行く事が出来るので、逆に言えば、そのようなチャンスをしっかりと活用して、自分から積極的にネットワークを広げる事が求められています。

 

・その他なんでも

周囲の海外インターンを見ていると、中国という国・民族に興味を持ってMSRAに来るというケースは少数派なのかも知れませんが、私は少なくとも、そのような興味を相当に持ってMSRAに来た一人のようです。中国という巨大な国家がこれからどのように成長していくかは世界中の人々の注目するところですが、日中の関係はこれからますます重要になってくるでしょうし、特に、中国人が日本にやって来るだけでなく、これからは日本人が中国に出て行く時代になるのは間違いないでしょう。急速な成長の最中、今が「旬」の北京を体験するという意味でも、興味のある方はぜひ応募を考えてみてください。

羽鳥さん、ありがとうございました。

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