MSR Intern Redmond(滞在中)のご紹介(第22回)

Microsoft Researchインターンのご紹介。第22回は、レドモンドのラボに滞在中、京都大学のMakoto P. KATOさんです。KATOさんには度々登場していただいていますが、現在は昨年の北京のラボに続き、レドモンドのラボでインターンをしています。北京とレドモンドでの研究の進め方や生活の違いについて詳しく語って頂いています。研究の進め方はメンターによるところが大きいですが、参考になると思います。

 

所属、学年、研究室

京都大学大学院 情報学研究科 社会情報学専攻 田中研究室 博士課程後期 二回生

 

インターンに来たきっかけ

昨年の夏にMSRAにインターンとして行った時に,MSRでのインターンの機会もいただきました.MSRには,Dr. Susan Dumais (SIGIR Salton Award,Latent Semantic Indexingの発明者!),Dr. Ryen W. White,Dr. Jaime Teevanなど,私が専門としている情報検索の分野(特にその中でもインタラクション系)で著名な研究者がいたため,喜んで参加させていただくことになりました.

 

目的

初めてのインターンではなかったので,とにかく海外に行ってみよう,だとか,大学と企業の違いを知りたい,とか,インターンシップに関わるような強いモチベーションはあまりありませんでした.今回のインターンシップではどちらかというと,情報検索の中でもインタラクション系の研究者と一緒に研究したら,どんな研究ができるだろう,というより研究的なところに興味がありました.別の角度からの興味として,最近,情報検索のトップ会議で論文をたくさん世に出しているRyenがどのような方なのか会ってみたい,というのもありました.(実際,MSRでの研究はSusan, Ryen, Jaimeと議論しながら進めることになりました.)

もう1つの目的は,英語でもっとディスカッションできるようになることでした.MSRAではメンターの方(酒井哲也さん)と日本語で研究のディスカッションをしていたため,あまり英語を使う機会はありませんでした.もちろん,MSRAのインターンとは英語で話していましたが,お互いネイティブでないため,聞くのも話すのもそこまで難しくはありませんでした.しかし,いざネイティブの方と研究の議論をしようとすると,なかなか聞き取れないしうまく思ったことが伝えられない.そこで,英語圏の国にしばらく滞在して,語学力をアップさせたいというのもMSRのインターンシップに参加するモチベーションとなりました.

 

インターンで行っている研究テーマ、目標のコンファレンス

大学での研究とは打って変わり,対話型Q&Aシステムにおけるユーザ間の会話分析を行っています.IM-an-ExpertというシステムがMicrosoft Researchから公開,また,実際に社内でも使われており,インスタントメッセンジャーで質問をして回答をもらうことができます.Yahoo! 知恵袋などと同様に,このシステムでは機械が質問に答えるのではなく,別のユーザが質問に回答します.例えば,「一番いいWindows Phone 7は何?」とシステムに尋ねてみると,「Windows Phone 7」に詳しい別のユーザのところにその質問が送られ,システムはこの質問に回答して欲しい,とそのユーザにお願いをしてくれます.回答者が引き受けてくれると質問者と回答者のチャットが始まり,回答者が質問に答えてくれます.(Windows Phone 7の例は実際に私が質問したもので,回答者の人は「XXX」が一番いいと言ってました.)

 

MSRでの研究

基本的に研究は頻繁に議論をして進めていきます.議論なくして研究は進まないという姿勢が見られます.MSRAにいた時には多いときで毎日,少なくとも週に2回はミーティングの機会を設けていただいていました.MSRのインターンでも,最初の1ヶ月は週に3回,しかも,メンターであるSusanに加え,同じグループの研究者Ryen,Jaimeとミーティングをしていました.その後も継続的に週に2回のミーティングがあり,おおよその場合,進捗や次に何をすべきかということを議論します.この頻度には驚きです.他のインターンとのミーティングを考えるとかなりの割合を占めることになると思います.こちらもそれに答えようとすると大変で,前のミーティングで話し合ったことを実行し,結果を出して,まとめて発表しなければなりませんでした.また,アドバイスもかなり具体的でアドバイザというよりもむしろ同じ立場に立って研究を進めていただきました.

また,もう1つ驚いたのは研究者の方でもかなり手を動かしていることです.研究の過程で,データのラベル付けをしたり,データの分類をしたり,コードを実装したりしましたが,どれにも協力していただきました.特に,まさかSusanにラベル付けを手伝ってもらうとは思いませんでした.(どれくらい皆の間で分類の合意がなされているか検証するため.)大学での感覚で言えば,教授にお願いしているようなものだと思います.思い出しただけでも恐れ多いです.同じようなことはMSRAでも経験していて,酒井さんには評価(2000以上のデータの正誤判定)の面でも大変お世話になりました.

最後に,もう1点.MSRではインターン期間が3ヶ月であるため,テーマはボスから与えられると聞いていました.実際,そうであることが多いようですが,私はなんとか自分のテーマでやらせてもらいたいと思っていたため,少しだけ粘ってみました.すると,Susanは非常に快く受け入れてくれ,最初の3週間を費やして何とか私の提案とグループのテーマ案の間ぐらいのテーマを決定することができました.グループによって異なるかもしれませんが,MSRとMSRAの両方の経験から言えば,テーマ設定は比較的自由にやらせてもらえると思います.(とはいえ,本来2週間でテーマを決定しその案を提出しなければならなかったので,少し迷惑をかけてしまったかもしれません.)

 

MSRとMSRAの異なるところ

MSR全般と大学の相違点は他の方の記事から推し量っていただくことにして,ここではMSRとMSRAの比較をしたいと思います.

この違いは文化的な差異から生まれるのかもしれませんが,さすがアメリカ,研究体制が若干MSRAに比べてフラットだったと思います.基本的に一番偉い人が研究の主な方向性を打ち出していき,自分のボスと1対1で話し合ったりする,という機会がMSR,MSRA,大学の研究室の順で多いように感じられます.MSRではほとんどすべてのミーティングで3人の研究者と議論をし,1対1でのミーティングはほとんどありませんでした.3人とも結構ばらばらなことをいったりします.(もしかしたら,単にSusanの方針だったのかもしれませんが.)

ソーシャルイベントの数もMSRAに比べてかなり多かったように思います.週に1度はアイスクリームイベント,マウントレーニアのハイキング,ワインパーティ,シアトルでクルージング,ガラス工芸体験,インターン VS. 研究者のサッカー試合,などなど.アメリカでは似たようなインターンシップの機会がたくさんあるため (私の研究分野だとGoogle,Yahoo!) ,研究に関すること以外でもインターンの満足度を上げようとしているのではないかと思いました.(もちろんMSRAでも同じようなイベントはありましたが,それ以上に多かったです.)

就業時間も異なるように感じました.研究者の方もインターンでも,朝早く来て,夕方6時に帰る人がたくさんいます.特に金曜日は早く帰りたい人が多いらしく,中には早朝に来て夕方4時くらいに帰る人もいるのだとか.このような時間感覚はMSRAにはありませんでした.夜21時くらいになると,もうほとんど人はおらず,残っている人はアジア系の人が多いように感じます.アメリカでは大抵早く帰って夕食を家族ととり,その後も自宅で仕事を続けることがよくあるといいます.また,休暇のとり方も豪快です.8月に1ヶ月休暇をとる人の話をたまに聞いたりしました.

 

インターンシップで行う研究の良いところ・難しいところ

MSRのインターンシップで行う研究に関して,一般的なインターンシップでの研究という点も含めて述べたいと思います.

良いところはたくさんあります.特にMSR系ですと研究環境に関しては大学と似たような雰囲気であるため,あまり苦労せずに大学と同じように研究を進めていけると思います.短期間で集中的に異なった環境で研究を行うことによって,研究をどのように進めていくかに関していろいろな発見があると思います.また,扱う問題もその捉え方の違いも感じることができるかもしれません.(例えば,他の研究室に行っても同じ事ができますが,受け入れ態勢のノウハウや短期間に集中的であるという点に欠くと思います.)

たくさんの人と交流することができます.同じグループのインターンにたまたま以前の研究で参考にした論文の著者がいたりしました.他のインターンと話をしていて特に感じたのは,日本の大学と中国・アメリカの大学における博士課程制度の違いでした.うわさどおり,博士号の取得難易度が後者では遥かに高いように感じました.MSRで会ったカーネギーメロン大学に在籍されている日本人の方から,自分では到底生きていけないのではないかという過酷な博士課程の話を聞いたりもしました.

一方で難しい側面もあります.MSRの例では3ヶ月で1つの仕事をします.大抵の人はインターンを終えるまでに実験を終わらせ,論文は大学に帰ってから書くことが多いらしいですが,まず第1に3ヶ月で実験が終わるのだろうかという問題があります.企業の研究所であるため,コード等の持ち出しは禁止,特に会社が保有するデータを使用した場合には,取り組んだ研究を継続することは難しいと思います.(無理ではありません.実際に私はインターン後に再実験をするためMSRAを訪れました.)また,取り組むテーマが大学で行っている研究と異なる場合,進めるのが難しかったり,大学での研究との整合性を取れなかったりします.

 

レドモンドでの生活について

夏のレドモンド,MSRは最高の環境です.全く暑くなく,長袖でちょうどいいほどの気候で,豊かな自然に囲まれ,少し足を伸ばせばシアトルダウンタウンに行くことができます.MSRは実に広大な敷地を有していて,仕事環境も整っており,食事にも困ることはありません.日本食,タイ料理,インド料理,メキシコ料理,ハンバーガ,洋食バイキングなどなど選択肢も幅広く用意してあります.研究なしで考えれば,長いバケーションのような感覚を味わえると思います.ただし,問題は車社会であることです.私はペーパードライバであるにも関わらず,無謀にも国際免許を取得し,レンタカーを借りていたため移動には困りませんでした.しかし,他のインターンの話を聞くと,自転車では太刀打ちできないような勾配がいたることにあり,繁華街からもかなり離れているため,食事や買い物に困るという話でした.

 

インターンに行こうか迷っている人に対して一言

インターンシップで行う研究の良いところ・難しいところについて書きましたが,個人的な観点から見れば良い点は難しい点を遥かに上回ります.良いと判断されたのなら,まずは応募されることをお勧めいたします.日本の感覚とはどうやら少し異なり,とりあえず出してみて通ってから考える,ということができると思います.(他のインターンの話によると,複数出して通ったところに行く,もしくは,通ったところから選ぶ,という戦略らしいです.)時間的な制約も逆に考えれば非常にやりやすく,例えば,どうせ3ヶ月しかないのだから思いっきり研究してみよう,とか,どうせ3ヶ月しかないのだから失敗してもいいからやってみよう,だとかそういう割りきりができるかもしれません.

 

加藤さん、ありがとうございました!

  1. 2011年 9月 26日

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